そのまま善は喜一に連れられ
役所の建物内の奥に連れて来られる。
…誰の部屋かは
その扉の仕様で察していた。
喜一がその扉をゆっくりと開けて
コツ、コツと足音を鳴らしながら中へ入って行く。
善もそこへ
悠々と歩き、続いて入る。
「やぁ、よく来たね。会いたかったよ。」
「俺ァ会いたかなかったぜ?…長さん。」
嫌な笑みを浮かべながら
中にいた人物へと
トゲのある言葉を向ける善。
部屋の奥にある
大きなデスクと椅子に座っているのは
ここの役所の長である
---青戸誠治(アオト セイジ)、総監だ。
善の言葉を聞いて
相変わらずだ、と笑う。
そして笑いをおさめると
青戸は善を見上げて
本題を尋ねる。
「……あの罪人はどうなった?」
「…ククッ…安心しろ。完全に息の根は止めた。
……だが俺の言いたいことはそれじゃねェ。」
口角を上げていた善だったが、
それを口にした途端
スッと笑みを引っ込めて
睨むように、目を細めて青戸を見下ろす。
「-----行った先は刺客の集りだった。
こりゃどういう了見だ…青戸。」
善の言葉に
隣に立っていた喜一が
思わず目を見開いて、隣を向く。
善も青戸も
互いに視線を交わしたまま
黙って相手を見ていた。
「わざわざ俺を刺客の集まる中にぶっ込むたァ…契約違反だぜ?」
---説明しろ。
善は青戸を睨みつけながら
低い声でそう告げた。
すると隣にいた喜一も
動揺したように青戸に詰め寄る。
「っ……総監、善に依頼できる内容は
脱獄犯や逃亡犯が対象のはずです!
今回の依頼内容に刺客のことは何も書かれて…っ!」
そう喜一が口を開けば
青戸は1度、目を伏せてから
静かに善を見た。
そして彼の質問に答える。
「……刺客の集まる場があると報告は受けていたが、滅することはできなかった。
これが何故かは…君も分かっているだろう?」
「ハッ…それで俺をってか…?」
------ここの奴らが弱ェから。
そう嘲笑うように
笑みを浮かべた善だが
その笑みもまた---目が合えば凍るような
殺意の混じる鋭いものだった。

