歩き進んで行くうちに
役所が見えきて


その前に立つ人の姿に



善は思わず口角を上げる。








「…ククッ…何だァ?出待ちかァ?」







善がそう言って笑みを向ける先には


穏やかな笑みを浮かべて
いつもの黒い正装に身を包む---役人。








「もちろん。
皆楽しみに君を待ってたんだからね。」

「ハッ…本当お前らは人でなしの連中だなァ。」







善はそう言いながら

喜一に連れられ
役所の中へ足を踏み入れる。




中には
喜一と同じように正装を来た
若い役人が警備に当たっていたり、


喜一と善の姿を見て
頭を下げる役人が2人を出迎えた。









「……相変わらず呑気だな、ここも。」

「…そうだね。
もう昔みたいな勇ましさは無いよ。」









妙に目立つ雰囲気を放っている2人を
色んな役人が

近くからでも遠目からでも
視線を送っていた。






そんな輩を横目で見ながら
善がそう言う。


それに対して喜一も
柔らかい笑みを浮かべながらそう返す。






フー…と煙管から息を吐きながら

薄く目を細める善。






その姿は色気を放ちつつも
どこか危険を感じさせられる…恐しさも伴っていた。









「………だからここは嫌いなんだよ。」








そう言った善の声に

喜一は口角を上げたまま
黙って彼の隣を歩いていた。