栞の笑顔が見たくて

翌日のホームルーム。委員長から文化祭の曲目についての発表があった。

『やっぱこれって、初めから決まっていたんじゃないかよ』
『そうみたいね。でも別にいいじゃない』
『そうは言ってもなぁ』

曲目は外国のスタンダードナンバー2曲だった。
例によって周りがざわめく。しかも、練習は明日からだそうだ。そこは仕方ないか。
ちなみに、運動部の何人かはおのおのの部活優先の為、当日の裏方に回るそうだ。
前から歌詞の書いたプリントが配られる。

『どうミヒロ。ちゃんと読める？』
『そりゃ、読むだけならな』

確かに、文法とか難しくなかった。一部固有名詞が分からない部分はあるが。
とは言え、御丁寧にルビまで振ってある。
要は意味が分からなくても、メロディーさえ覚えれば誰でも歌えるって寸法だ。
しかもスタンダードナンバーだから、多くの人は、一度は聞いた事があるって事だ。
よくよく考えれば、大掛かりな準備もなし。ただ歌うだけ。委員長もよく思いついたな。褒めてやるよ。

「練習は明日からです。みなさん、帰らないでください」

『明日からか、うーん』
『いいじゃない、私は楽しみだな』

まぁ、いいか。


※※※※※


帰宅すれば、夕食までに少しの間時間がある。ちょっと聞いてみるか。
曲名をインターネットで検索すれば、すぐにその動画はみつかった。

『あぁ、これか。聞いた事あるな』
『これならわたしでも歌えるよ』
『ホントか？じゃあ歌ってみろよ』
『いいよ。ラララーラララー……』
『へー、結構いけるじゃん』

正直、俺なんかが歌うよりずっといいなって。掛け値なしにそう思った。