大田の実家に向かう電車。俺としては3度目になる。
ただし、今回は一人だ。留守だったらどうしよう。忘れられていたらどうしよう。
様々な思いが頭をよぎる。何の為?答えは一つ。
栞に会いたい。
俺はただその一心でこの電車に乗っている。
居てくれよ、栞。まだまだやり残してる事、山ほどあるだろ。
バスに乗り換え、停留所を降り、いよいよ大田の実家が見えてきた。
心臓が脈打つのが分かる。
青々とした小庭に目をやり、深呼吸してチャイムを鳴らす。
「ごめんください」
「はーい」
バタバタとおばあさんが出てくる。
「あら、三田君ね。いらっしゃい」
「突然お邪魔してすみません。あの、栞さんの仏壇にお線香をあげたいのですが、よろしいでしょうか」
「どうぞ、きっとあの子も喜ぶと思うから」
なんだ?この物知りげな対応は。
俺は栞に出てきてほしい一心で、今月号の(花と虹)を取り出し仏壇の脇に置き、お線香に火をつけた。
仏壇に飾られている栞の笑顔は、俺の知っている栞と何も変わらなかった。
「三田君、こちらにいらっしゃい。冷たいジュースお出しするから」
そう言われ、居間に通される。
「おばさん、その前に少しいいですか」
俺は始めに栞と出会った階段、そして廊下が気になり、そこをじっと見ていた。
おばさんが近づき、突拍子もない事を話しだした。
「あの日から栞は三田君のそばに居たのよね」
!!!
何で知っているんだ?
おばさんは何をどこまで知っているんだ?
「こんなところで立ち話もなんですから、どうぞこちらに」
言われるままに、居間で話しをする事にした。
「いつ来るかは分からなかったですが、いつかあなたがここに来るのは分かっていました」
「それはどういう意味ですか」
「その話しの前に、あるところについてきてくれますか」
「それは構いませんが、どこです?」
「若い子ならこういう時、ひ・み・つ、とか言うんでしょうね」
「おばさんも十分若いですよ」
「あら、嬉しいこと。じゃあ早速行きましょう」
おばさんは、表に停めてあった車のハンドルを握ると車を走らせた。
「こう見えてね、おばさん車の運転も好きなの」
これには正直驚いた。しかし、こういう田舎だと車の運転が出来ないと生活も不自由だろうし。
途中で仏花を買って、その後10分くらいのところに目的地はあった。
墓地だ。
「びっくりしたでしょう。もしかして来たくはなかった?」
「いえ、行きましょう」
「そうね」
いくつもの墓が並んでいるその奥に、おばさんが目指している場所があった。
「ここよ」
おばさんはそう言い、手際よく墓の花を替え、線香を灯した。
手を合わせるおばさんに習い、俺も続ける。
「おばさん、一ついいですか」
「いいですよ。どうしてここに?かな」
図星だ。どうやらこのおばさんは、全てお見通しのようだ。
「まいったな、そうです。どうしてですか」
「栞の居場所はここなの。ここで眠っています」
「そんな事は!いや、いいです」
「あの子はね。本当に明るい子だったの。素直でいい子だったのよ」
「それは確かに。あ、いや、大丈夫です」
俺は思わず、自分の知っている栞の事を話すところだった。
「さぁ、帰りましょう。見せたい物もあるし」
「見せたいもの、ですか…。はい」
再び車に乗り込むと、おばさんがこの界隈の田舎自慢を話しだした。
栞の事から話しを逸らす作戦なのは、俺でも分かった。
程なく家に戻り、再び居間で会話の続き。
俺は思い切って、話しを切り出した。
「栞が…栞さんが俺のそばにって、なぜ知っているのですか。俺は、それが知りたいんです」
「ちょっと待ってね」
そう言うと、おばさんは奥に入っていき再び顔を出した。手には便箋を持って。
「これあの子からの預かり物なの。読んでみて」
手渡された便箋には小さく「ミヒロへ」と書かれてあった。
俺は恐る恐る中の手紙を広げて、読みはじめた。
ただし、今回は一人だ。留守だったらどうしよう。忘れられていたらどうしよう。
様々な思いが頭をよぎる。何の為?答えは一つ。
栞に会いたい。
俺はただその一心でこの電車に乗っている。
居てくれよ、栞。まだまだやり残してる事、山ほどあるだろ。
バスに乗り換え、停留所を降り、いよいよ大田の実家が見えてきた。
心臓が脈打つのが分かる。
青々とした小庭に目をやり、深呼吸してチャイムを鳴らす。
「ごめんください」
「はーい」
バタバタとおばあさんが出てくる。
「あら、三田君ね。いらっしゃい」
「突然お邪魔してすみません。あの、栞さんの仏壇にお線香をあげたいのですが、よろしいでしょうか」
「どうぞ、きっとあの子も喜ぶと思うから」
なんだ?この物知りげな対応は。
俺は栞に出てきてほしい一心で、今月号の(花と虹)を取り出し仏壇の脇に置き、お線香に火をつけた。
仏壇に飾られている栞の笑顔は、俺の知っている栞と何も変わらなかった。
「三田君、こちらにいらっしゃい。冷たいジュースお出しするから」
そう言われ、居間に通される。
「おばさん、その前に少しいいですか」
俺は始めに栞と出会った階段、そして廊下が気になり、そこをじっと見ていた。
おばさんが近づき、突拍子もない事を話しだした。
「あの日から栞は三田君のそばに居たのよね」
!!!
何で知っているんだ?
おばさんは何をどこまで知っているんだ?
「こんなところで立ち話もなんですから、どうぞこちらに」
言われるままに、居間で話しをする事にした。
「いつ来るかは分からなかったですが、いつかあなたがここに来るのは分かっていました」
「それはどういう意味ですか」
「その話しの前に、あるところについてきてくれますか」
「それは構いませんが、どこです?」
「若い子ならこういう時、ひ・み・つ、とか言うんでしょうね」
「おばさんも十分若いですよ」
「あら、嬉しいこと。じゃあ早速行きましょう」
おばさんは、表に停めてあった車のハンドルを握ると車を走らせた。
「こう見えてね、おばさん車の運転も好きなの」
これには正直驚いた。しかし、こういう田舎だと車の運転が出来ないと生活も不自由だろうし。
途中で仏花を買って、その後10分くらいのところに目的地はあった。
墓地だ。
「びっくりしたでしょう。もしかして来たくはなかった?」
「いえ、行きましょう」
「そうね」
いくつもの墓が並んでいるその奥に、おばさんが目指している場所があった。
「ここよ」
おばさんはそう言い、手際よく墓の花を替え、線香を灯した。
手を合わせるおばさんに習い、俺も続ける。
「おばさん、一ついいですか」
「いいですよ。どうしてここに?かな」
図星だ。どうやらこのおばさんは、全てお見通しのようだ。
「まいったな、そうです。どうしてですか」
「栞の居場所はここなの。ここで眠っています」
「そんな事は!いや、いいです」
「あの子はね。本当に明るい子だったの。素直でいい子だったのよ」
「それは確かに。あ、いや、大丈夫です」
俺は思わず、自分の知っている栞の事を話すところだった。
「さぁ、帰りましょう。見せたい物もあるし」
「見せたいもの、ですか…。はい」
再び車に乗り込むと、おばさんがこの界隈の田舎自慢を話しだした。
栞の事から話しを逸らす作戦なのは、俺でも分かった。
程なく家に戻り、再び居間で会話の続き。
俺は思い切って、話しを切り出した。
「栞が…栞さんが俺のそばにって、なぜ知っているのですか。俺は、それが知りたいんです」
「ちょっと待ってね」
そう言うと、おばさんは奥に入っていき再び顔を出した。手には便箋を持って。
「これあの子からの預かり物なの。読んでみて」
手渡された便箋には小さく「ミヒロへ」と書かれてあった。
俺は恐る恐る中の手紙を広げて、読みはじめた。
