1月1日。早速携帯が鳴る。大田だ。

「よう、俺だおめでとうさん」
「おめでと。今年もよろしくな」
「ミヒロってさ、明日って用事ある?バンドは正月休みだよな」
「あると言えばあるが。何かあるのか?」
「夏に俺のじっちゃんとこに行ったろ。また行くんだ。どうせならミヒロも誘おうかなって」

『確かにお前がとりついてから、一度も行っていない。栞はどうだ』
『そうね、行ってみたいかも』
『そっか、そうだよな』

「そうだな、俺も行きたいな。あの後おじいさんにもおばあさんにも会っていないし」
「よし。それじゃまた明日の8時、駅前だぞ。じゃあな」

考えてみれば、あの夏休みから全ては始まったんだよな。

『栞さ、やっぱりあの家に帰りたいんじゃないか』
『こうやって時々帰れれば十分かな』
『一つ聞いていいか』
『いいよ』
『栞の仏壇って大田の家じゃなくて何故実家にあるんだ』
『それは話せば長くなるし』
『いいじゃん。まだ寝るには早いし』
『そんな事より、この間のライブ凄かったね』

話しを逸らしたな。そこの部分に、栞が成仏出来なかったヒントがあると推測するのは容易い。

だが、ここでこれ以上無理に聞くのは得策ではないだろう。

『そうだな。中川の知り合いにも興味あるしな』
『そう言えば、何だか中川君って同好会に入ってから明るくなったよね』
『メグのお陰だろうな。なんだかんだ言ってあの二人お似合いだし』
『始め気付いてなかったくせに』
『それを言うな』
『あは、言っちゃあダメ?』
『でもさ、明日楽しみだな』
『そうね、楽しみだね』

そう、栞の屈託のない笑顔が俺の安らぎなんだ。