栞の笑顔が見たくて

ある日の放課後。俺、リク、五十嵐、メグそして栞。この(5人)は生徒会の扉の前にいた。
何故このメンバーなのか。
何故生徒会の前なのか。

話しは数日前に遡る事になります。


※※※※※


ドカドカジャーン!

「決まったね!」
「あぁ、今のは良かったな」
「うん。僕も歌ってて気持ち良かったよ」

そう。その日も俺達は五十嵐の家で練習を続けていた。

五十嵐が言う。

「でもさ。沖田はこのメンバーでいいの」
「それはさ。僕だってもう一人いればなって思ってるけど」
「ビートルズやるなら、ジョージも必要だもんね」
「分かってるよ」

リクの気持ちも分かるが、そうそうメンバーが簡単に集まるとも思えないしな。

『お前はどう思う』
『やっぱり同好会の話しを進めた方がいいと思うの』
『同好会か』

「リクさ、一度生徒会に行ってみないか」
「僕はいいけど」

五十嵐が声を上げる。

「私は行かないからね」
「え、何でだよ」
「話しを聞きに行くだけでしょ。あんた達で行けばいいじゃん」
「そりゃそうだけど」
「どうせ、行って即決じゃないんでしょ」
「多分な」
「だったら任すわ」

リクが腕を回して耳打ちを始める。

「だから嫌だったんだよ」
「そうは言ってもなぁ」
「何で僕達だけで行く事になるの」
「うーん、困ったなぁ」

五十嵐と言い、リクと言い、俺の立場も考えてくれよ。

『栞さぁ、助けてくれよ』
『困ったわね』
『さすがの栞も、どうにも出来ないか』

「リクさあ、やっぱ俺達で行くしかないんじゃないか」
「そうだけど」
「五十嵐さ、正式に話しをつける時にはお前も来るんだろ」
「その時はね」
「よし、決まりな」

『多少強引たが、こうするしかないよな』
『リク君には悪いけどね』

「リクさ、明日行こうぜ」
「明日……いいけど」
「よし。と言い訳で、明日の練習は休みな」

五十嵐が言う。

「ちゃんと話しを聞いて来るのよ」
「お前が言うな」

空気を変えるにはこれかな。

「じゃあさ。その話しは置いといて。もう1曲やろうぜ!」


※※※※※


翌日の放課後。俺とリクは、生徒会室に向けて歩いていた。

「僕はさ、別にいいんだけど」
「まぁな、あいつはあんな奴たからな」
「でもさ、よく考えてみてよ。同じメンバーでしょ」
「だからさー、そんなに根に持つなよ」
「だってさ」

栞につぶやいてみる。

『女々しいなぁ』
『それもリク君の個性よ』
『お前、上手いこと言ったつもりだろ』
『あら、そうかな』

そして程なく、生徒会室に到着した。

「リク、入るぞ」

扉を開ける。
校長室もおそらくこんな感じなんだろうな。みたいな事を思わせるような部屋だった。

「おじゃまします」
「こんにちは。生徒会に何か用事ですか」

にこやかに声を掛けてきたのは、生徒会長とおぼしき女生徒。
他に、生徒会委員と言った感じの女性が二人。
生徒会には女性しか居ないのか?
そう言えば、1組の委員長も女子だ。
男子は何をしてるのだろう。

俺が話し出す。

「実は同好会設立の件で来ました」
「同好会ですね。君を入れて二人ですが、部員はこれだけですか?」

やはり、部員数から来やがった。

「いえ、もう一人居ます」
「では三名ですね」
「そうです」

会長が会員に声をかける。

「君、同好会新設の規約を出してあげて」
「はい。少々お待ちください」

生徒会員その1らしい女性が、書類ケースをガサガサし始める。

会長が話す。

「規約にも書いているのですが、同好会を新設するには、最低四人の部員、それから顧問の先生一人が必要なんです」

会長がそこまで話したところで、同好会の規約が出てきた。

「これを一枚渡しておきます。条件が整えば、またここに来て下さい」


※※※※※


俺達は、一枚の書類を持たされ、うなだれるかのように中庭に向けて歩いていた。
リクには別の事に頭を向けさせるように、違う雑談をする事にした。

「生徒会長って女子なんだな。リク知ってたか」
「知ってたよ。ほら、入学した時に全校集会で生徒会について壇上で話しをしてたでしょう」
「あ、体育館での時か」
「そうだよ。覚えてないの」

その時は……居眠りしていた。と言う記憶ならある。

『ミヒロ、寝てたんでしょう』
『今思い出したよ』
『嘘くさいわ』
『うっせ』


「とにかく明日五十嵐に報告だな」
「うん、そうだね」

リクの「そうだね」は、決して笑顔ではなかった。