そしてまた翌日。昨日とは打って変わり、空からは大粒の雨が降っていた。
俺は相変わらずぼんやりと空を眺めていた。

「よう、なんだよ辛気臭い顔しやがって」

大田だ。

「そんな顔していたか」
「お前って顔に出るから分かるんだよ」
「お前は退屈じゃないのか」
「へ?俺が退屈な訳ねーじゃん。俺にはな、彼女を作ると言う壮大なプロジェクトが現在進行形で進んでいるんだぜ」

能天気で、羨ましいぜ。

『なあ、お前の弟。大丈夫か?』
『言わないで。恥ずかしいにも程がある』
『だよなー』

扉の所で、何かがやがやしている事に気付いた。

「ミヒロー、ちょっと」

メグだ。

「ミヒロにお客さんだよ」

何だ、俺に用って。
廊下に立っていたのは、喧嘩の時に話した女子だった。

「少し話したい事があるの。今いい?」
「あぁ、俺なら大丈夫だ。ここで出来る話しか」
「ついてきて」

特に断る理由もなく、そのままついて行く事にした。
どんどん階段を登っていき、着いた場所は屋上の扉が見える踊り場だった。

「この間はごめんなさい」
「いいって。お前あれから大丈夫だったのか?」

その子は目線を外し話し始める。

「私ね。下らないって思われるかもだけと。彼氏取られちゃった」
「そっか」
「多分気付いてるかもだけど、彼氏も相手の彼女も同じ部活なの」

確かにそこはそうだろうな、とは思っていたが。

「部活は辞めちゃったけど、音楽は続けたいんだ」
「そうか。好きなら続けるべきだな」
「ちょっと当てがあって、もしかしたら続ける事が出来るかもなの」
「それは良かったじゃないか」

その子は、顔をこっちに向けて話しを続ける。

「うん。三田のおかげで吹っ切れそう。本当に感謝してる」
「俺は何もしてねーよ」
「でも、この話しを聞いてくれる人はあんただけだから」

「ありがとう」そう言い残すと、階段を足早に降りていった。
俺も戻るか。

『ねえ、ミヒロ。喧嘩の事はともかく、案外いい子かも知れないね』
『そうだな。あぁやって、本心を話せる人が居なかったんだろうな』

構内にチャイムが鳴り響く。

『やっべえ。急がないと』