翌日の放課後。俺はいつものように中庭に来ていた。
リクは居ない。あいつどうしたんだろ。
俺は芝生に腰をおろし、空を見ていた。

『なぁ、栞。俺何してるんだろな』
『退屈なんじゃないかな』
『馬鹿言え。俺はお前っていう幽霊にとりつかれてるんだ。それだけでもフルハウスだぜ』
『そうじゃなくって、ミヒロはさ。文化祭の時に、誰にも出来ない体験をしたでしょう。今、ポッカリ穴が空いちゃってる。みたいな感じだと思うの』
『確かにそれは否定出来ない』
『決めるのはミヒロ。私は背中を押す事しか出来ないの』
『俺はこうして放課後、足しげくこの中庭に通っているのは。そうだな。本音を言えば、リクに何かを求めているのかもな』

バタッと寝そべり、流れる雲を見ている。
退屈、確かに そうかもな。
運動部の声が聞こえる。
どれだけの時間、こうしていただろう。

「ミヒロ、何しているの」

逆さまの顔で現れたのは、メグだった。

「メグ、お前こそ何してんだよ」
「一匹、馬鹿みたいなのが転がっていたから、からかいに来たの」
「なあメグ」
「何よ」
「お前も退屈なのか?」
「ミヒロに言われたく無いわよ」

栞が、クックックッと笑う。

「お前から見て俺ってどう思う」
「暇人」

即答しやがった。

「あのなぁ、少しはオブラートに包んで喋れんか?」
「ありのまま言っただけよ」

すいっと身体をおこして。

「購買にでも行かないか」
「うん。ミヒロのおごりでね」


※※※※※


二人それぞれジュースを手に、席についている。
そうすると、メグはこんな事を言い始めるんだ。

「うーん、何かね。こう、パーっとした事起きないかしら」
「暇なのはお前じゃんかよ。それにだな。そういう、パーっとした事なんてそうそう起きないって」
「だってさー。じゃ、ミヒロは充実しているの?」
「それは、だな」
「まぁ、充実している人は、あんなところでゴロゴロしてないよね」
「うっせ」

『すっかり見抜かれてるねー』
『お前もうるせー』

確かに栞の言う通り、俺は退屈しているんだ。
くっそ、栞め。メグめ。気付かなくていい事をほじくり返しやがって。

しかし、この後想定外の事が起きる事を、俺は知る由もなかった。