川道村。
電車バスを乗り継いで約3時間はかかる田舎だ。
前日に調べていたとは言え、流石にこの距離は辛いと思わざるを得ない。


そもそも何故ついて行くかと言えば、どうやらそこのじいちゃんがえらく恐い人らしい。
苦手なんだとか。要は誰かを呼んで空気を中和させる作戦のようだ。

そんな不安をよそに、乗り換えたバスは着実に目的地を目指していた。
バスを降り、およそ10分位歩いた所に大田の実家はあった。

築100年かと思わせる古民家っぷりだが、玄関から見える庭には沢山の花が植えられていた。


「ばあちゃん、じっちゃん、ただいま!」

大田はどかどかと上がっていく。

「お邪魔します」

そう言い、ふと廊下から見える仏壇に目が入る。
そこには、俺と同じくらいの女性の写真が立て掛けられていた。
何故分からないが、その写真が妙に気になった。

「ミヒロ、何してんだよ。あ、それ俺の姉ちゃんなんだ。それよりこっち来いよ、ジュースでも飲もうぜ」
「あぁ、そうだな」

奥の居間に通される。

「こんな遠くまてよく来てくれましたね。ゆっくりしておいで」

おばあさんは、凄く優しい感じの人だった。

「はじめまして、三田祐也と言います。今日はお邪魔します」

俺は普通に挨拶したつもりなのだが。

「これはこれは。丁寧に挨拶出来る子ね。涼も見習いなさい」

大田は、
「何だよお前、シレッと点数稼ぐなよな」
と、こぼす。

こうやって、会話をしていると気にならないが、大田がトイレに行き、1人になった時ある事を思った。

(さすがに田舎だな。セミ以外の音が何も無い。本当に静かだ。それこそ気味が悪いくらい…)

その夜はご馳走になり、翌日は釣りに行くと言う話しで盛り上がった。

「明日は早いから、そこそこに休もう」
その大田の提案には、素直に応じる事にした。


※※※※※


…う、うん…何時だ?

携帯で時間を確認する。
2時か。なんでこんな時間に目がさめたのかな。
まぁいいか、トイレにでも行こう。

俺は身体を起こし、階段に向かった。