「パイプ椅子、どれくらい並べてるんだろ」
「暗いしなぁ、でもかなりの数はあるぞ」

俺と大田がそんな話しをしていると、メグが続ける。

「折角だから、中に入ろうよ」
「そうだな」

舞台では、軽音部とおぼしきバンドが演奏している。

「ねぇミヒロ。これってなんて言う曲?」

知らない曲だった。
ただ、歌詞が英語だと言うのは分かったが。

「俺も知らないな。大田は?」
「俺も知らね」
「何だ、誰も知らねえじゃんかよ」

『ミヒロ、ミヒロ』
『どうした?』
『この曲知ってるよ』
『マジ?なんて言う曲?』
『ビートルズのプリーズ・プリーズ・ミー。有名な曲だよ』

そんな会話をしていると、曲が終わった。

《ネクストナンバー……ラストナンバー……ツイスト・アンド・シャウト!》

「今の英語って合ってるのか?」

大田が聞く。

「まぁ、日本語英語っぽいけど、言ってる事は理解出来る」

『だよな、栞』
『うん。でも発音が笑っちゃうけどね』

「明日、ここでやるんだ」

メグがポツリと言う。

「そうだな。一杯になればいいな」

と俺。
大田が続く。

「今日の手応えなら、きっとうまくいくさ。だろ、ミヒロ」
「おうよ、一杯にしようぜ」

俺達は、翌日に控えたその舞台をこうして眺めていた。
って、あの栞さん。あなたは何をしておられるのかな?
バンドの演奏に合わせてダンスしている栞。
余程ビートルズがお気に入りのようだ。

『帰りにCDショップにでも行くか?』
『いいの?イエーイ!』

本当に幽霊なのか、疑いたくなるぜ。