夏、それはどこまでも夏だった。

アイスコーヒーを飲みながら、テレビを見ている昼下がり。
誰だか知らないお笑い芸人がコントをしている。
一体これの、どこが面白いのかさっぱり分からないのだが。
まぁ、あれだ。日がな夏休みをボケッと、そしてダラダラと過ごしている訳だ。


大きなあくびをつき、うーんと足を伸ばしている。
そんな時だった。携帯が鳴ったのは。


大田か。


「…俺だよ。例の件、明日の8時駅前だからな。ミヒロ忘れるなよ」
「はいはい、分かってるよ」
「じゃあな」


電話の主は大田涼と言うクラスメイト。
ちなみにミヒロとは俺のあだ名。
三田祐也。略して「ミヒロ」。
誰が言い出したのか知らないが、中学の頃からそう呼ばれている。

実はボーリングで賭けをして、負けたら大田の実家について行くというもの。
そして、その賭けに負けた俺がいる。

まぁ、どの道家で居てもダラダラしてるだろうし、高1の思い出づくりくらいにはなるだろう。
その時はそれくらいに思っていた。

テレビを消し自室に戻り、俺はパソコンでその行先のルートを検索してみた。どうやら長旅になりそうな事を知り、無意識に「やれやれ」と呟き、そして深くため息をついた。