「忘れ物しちゃった」


 部活が終わり、帰ろうとしたところで、宿題に出されたプリントを教室に忘れたことを思い出した。階段をかけあがり、教室のドアを開ける。


「……あれ、朱音ちゃん?」
「ひ、陽葵さん!? どうしてここに、って、あっ」


 教室の中には友人の間宮朱音ちゃんがいた。酷くあわてた様子で、びっくりしたせいなのか、朱音ちゃんは、手に持っていた『何か』を落としてしまった。
 その『何か』は、黒い、箱のようなものだった。
 朱音ちゃんは、すぐにバッと箱を隠した。


「……み、見ちゃいましたよね」
「う、うん」


 私がそう言うと、朱音ちゃんは、突然泣き出した。なんで、突然?


「陽葵さんにはっ……見られたく、なかったのにっ……」