「いいよね?真子?」

彩空が問い詰める

「え…?いくら…?」

今でも体の震えは止まらない

「2000円」

「そんなに…!?」

しまった

心の内が出てしまった

「だめ…?」

彩空が捨てられた子犬のような瞳をして言った

「だめではないけど…」

「けどっ!?」

彩空が目を輝かせて期待する

その時、開いている彩空のカバンからちらりと見えた

ヒョウ柄で真ん中に大きな黒色のリボンが付いている派手な彩空の財布が

それは彩空の大好きなブランド品

後ろ側に大きく『ショネル』のロゴ

(あるじゃん…)

「ほんとにないの…?もう一回確認してみたら…?」

ダメもとの一言を真子は勇気を出して言った

「は?」

低く野太い声

本当に彩空なのか

「えっと…、だから、もう一回確認してみて…?それでもなかったらあたし、貸すから…」

もう、真子は彩空の顔を直視できない

「ないって言ってんじゃん、何言ってんの?」

「だって…、見えたもん。彩空ちゃんの財布」

何をされてもいい

ただ、騙されるのはもう懲りた

それだけは嫌だ

「もういいよ、信用してくれないなら。真子のお家、私のパパの力で潰すから」

「え…?」

彩空が言った『潰す』という言葉が頭でループする

「あ、真子のお家って壇坊柱第一保健所(だんぼうちゅうだいいちほけんじょ)の事ね!」

彩空が付け足すと、周りの4人もゲラゲラと笑い出した

「なんで…、なんで知ってるの?」

予想外の発言に真子は戸惑う

「有名じゃん!知らない人なんていないって!」

そう言った文愛は一番笑っている

「そんな…、それはダメ!」

真子が言った

「じゃ、払って?」

そう言い、彩空が大きな唇が描かれているスマートフォンケースを真子に差し出した

「う…、うん」

また、騙されてしまった

嘘を打ち破ろうと努力したものの、やっぱり無理だった

悔しい











でも、勝てないから仕方がない