あれから二人はちょくちょく一緒に飲んでいてその度に仲良くなっていたし、お父さんはよくこうやって仲の良い人を家に迎い入れて飲んでいるし、変わったことではないけど。

でも、こんなに早いとは思わなかった。


「喜んでお伺いしますって、返事出しますね」
「えっ」
「ついでに今夜、お付き合いしてますっていう挨拶もしちゃいましょうか」
「えっ」
「スーツ来ていかないとな」


トントン拍子で進んでいく斉藤さんに付いていけない。


「斉藤さんスーツ持ってるんですか?」


何故か一言目に出た言葉がそれだった。


「持ってますよ。サラリーマンではないけど一応社会人ですから。と言っても秋冬で三着くらいだったかな……」


クローゼットを開けて中をまさぐる斉藤さん。

どれが一番びしっとしてると思いますか?なんて聞いてくる斉藤さんに、変に胸がドキドキする。

勿論緊張とか不安とかもあるけど、それよりもっと。


「斉藤さん!めちゃめちゃ彼氏っぽーい!」


能天気だと笑われるかもしれないけど、お父さんに付き合ってるって挨拶をするためのスーツを選ぶその姿に、とんでもなくときめいた。


苦笑いをする斉藤さんに、「じゃあ私は隆二と作戦会議してきますので!」それだけ言い放って隣の自分の家に走った。