数年前は恥ずかしがって言えなかったらしい言葉。
夫婦になってからだと、案外さらりと言えることもあるのかもしれない。


「え、それだけ?」
「それでけって?」
「いや……そんなもんで惚れられてたとは……百合チョロすぎてちょっと心配になるんだけど」
「え、なんでですか」
「だってそんなんで惚れられるなら他の男にも簡単にオチそうだから」


慰めるつもりが、更に落ち込ませてしまった。


「大丈夫!修一さん以外の男に同じことされても、これ以上のことされても、修一さんじゃなかったら惚れませんから!」


慌てて取り繕うつもりで言った言葉に、思わず自分で赤面した。

やっぱり、いくら夫婦になって照れることが減ったといえ、照れるときは照れる。多分一生。


「本当?」
「は、い」
「嬉しい」


本当に嬉しそうに言うもんだから、また更に照れてしまう。


「俺が百合に惚れた理由は前に言ったから繰り返さないけど、今の百合の好きなとこはね、料理が美味しいとこと、ニコニコしてくれるとこと、こうやって俺が落ち込んでたら一生懸命励ましてくれるとこ」
「……」
「あ、あといまだに俺の載ってた雑誌とっておいてて、俺の載ってるページに付箋つけてるのにはちょっとときめいてる」


聞いてもないないのに嬉しそうに語り始める修一さんに、どう返事すれば良いのか分からない。


「まあ挙げればキリ無いけどね。百合は?」
「えっ、私?」
「うん。また教えてくれないの?」
「言、えます……それくらい」