「あいつウンコだ!」


隼人と沙紀が幼稚園に入園して半年。

登園の度泣く子もいるというけど、二人はそんなこともなく毎日「じゃあねママー」とニコニコ、逆に寂しいくらいだった。

のに。


「う、ウンコ……?誰が?」
「あのウンコ、俺が先にブランコ乗ってたのに無理矢理押し退けてきて、文句言ったらぶってきたんだ!」


家族揃っての晩御飯中、隼人がむくれながら言った。


「幼稚園児のウンコは蔑称みたいだね。面白いなあ」


と、ニコニコ修一さんがハンバーグを口に運ぶ。


「隼人食事中にウンコ……いやそもそも人のことをウンコとか言わないの。で、結局誰よ」
「名前なんか知らない。ウンコだよ」


思わず頭を抱えそうになったとき、沙紀が「私知ってるよ。もみじ組の桜子ちゃんでしょ」と。

女の子だったのか……しかも絶対可愛い子の名前だよそれ。


「男は女の子にやられっぱなしくらいがちょうど良いんだよ」
「そんなこと言ったら私が修一さんのこと尻に敷いてるみたいじゃないですか」
「いやそんなことは……」


ギロリと睨み付けると修一さんが萎縮した。


「男のくせに格好悪い。明日やり返しなね」
「え、でも……」
「良いから。やり返せ」


沙紀にそう指示されて隼人はきごちなく「分かった……」と頷いた。

今でさえ沙紀に負けてるのに明日桜子ちゃんにやり返せるのか?と、女の子にやられっぱなしの隼人を見て思った。


「仕返しは別に良いけど、仲直りしなね」