「さ、斎藤さん……?」
「キスしたあとにそんなすぐ切り替えて店まわれるほど、落ち着いてないんですけど俺……」


頭上から降るその低い声に、胸の高鳴りが最高潮になる。

第一後ろから抱き締められるのとか始めてだし、いつも私と話すときの一人称〝僕〟なのに、前酔っ払いながら私に説教かましたときもそうだったけど、たまに〝俺〟になるの、それすごく素敵だと思う。


力強く私を抱き締めてくれているその腕に視線を落とす。

どうしよう。斎藤さん、最強に好きだ。


ふっと、斎藤さんが後ろから私の肩に顔を埋めた。

わざとなのかそうでないのか分からないけど、斎藤さんの吐息が一瞬首元にかかったせいでビクッと反応してしまって、恥ずかしい。


「これは構図的にちょっとまずいんじゃないかなー?校内であって良い構図ギリギリ越えそうな……」
「……前原さんが誘ったくせに」
「いやいや私そこまでは誘ってない。あとそこで喋らないでください」


斎藤さんは楽しそうに短く笑ってから、ぱっと私を離した。


「じゃ、行きましょう。お化け屋敷でした?」
「ええ、斎藤さんこそ切り替え!今度は私が落ち着かないんですけど……!」
「僕は落ち着きましたよ」
「くっ……」
「ドキドキさせてきたのでお返しです」


お返しっていうか……仕返しじゃんこれ……。

と、火照った体を誤魔化すように、斎藤さんの手をぎゅっと繋いだ。


お化け屋敷行くし久しぶりになんかイタズラできないかな。