胸のあたりまで伸びた髪はふわふわと綺麗に巻かれていて、小さなティアラが輝き。
薄い水色のドレスに身を包む前原さんは、シンデレラでしかなかった。

極めつけに、恥ずかしそうに頬を染めて俺を見上げるその目。


「……まじか」


暫く詰まった後、口元を手で抑えながらようやく出た短い言葉。


「まじかって、それはあの、どういう意味の」


俺の気持ちを読み取れないらしい前原さんはまだ不安げに俺を見上げている。

そこはもう俺のこのにやけを抑えるのに必死な表情から察してほしいんだけど。


「通訳すると、可愛いすぎかよ前原さん俺だけのシンデレラかよ。と内心悶えてるよ」


恥ずかしすぎる通訳をしてくれた兄ちゃんの頭をひっぱたいた。
あながち間違いではないけど。


「可愛い、です……すごく」


付き合う前ならさらりと言えたその言葉は何故か今、言うのにすごくドキドキして、でも言わずにいられなくて。

言ったら言ったで、前原さんが俺より赤くなって、それでまた、ドキドキして。


「もう秋なのに、なんか妙に暑いんすけど」
「ケッ」
「お姉ちゃん可愛いーシンデレラだー!」


三人の言葉を背後に手を出すと、その手のひらに前原さんの手がおずおずと触れてきて。ぎゅっと握った。


「王子様のエスコートだ……」
「そんな可愛いこと言わないでください……」