二人が出て行って、ようやく兄ちゃんは力が抜けたように正座を崩した。
「ああ、怖かった!」
「俺も怖かった……」
「なんかジャージだし思ってたのとは違うけど、まあ顔は綺麗だし、あれは良い女だぞ。あの若さであの教育ができるのはすごい」
「へへ」
「あとおっぱいでかいし」
真顔で付け足す兄ちゃんの頭を反射的に遠慮なくひっぱたいた。
本当この親子は。
いや、怒られて改善するだけまだ智輝の方がましだ。
「今度また何か変なことしようとしたら許さないから」
「こえーよ顔……」
「当たり前だろ」
「もうしないって。お前が怖いしそれよりもっとあの子が怖いし」
その言葉をしっかり確認してから、俺も自分の分のグラスと冷蔵庫から適当につまみを取ってきて、二人で飲んだ。
「で?詳しい馴れ初め聞かせろよ」
兄ちゃんが楽しそうだ。
俺も長くはなっても、好きな人との馴れ初めを話すのは、決して嫌いじゃない。
「四ヶ月くらい前、前原さんが自分の家の前でこうやって、項垂れてたんだ」
「うんうん」
兄ちゃんはここから徒歩五分もかからない一軒家に住んでて、会わないわけでもないけど、やっぱり会ってこうやって話し始めると、尽きない。

