「私は前原百合。おっぱい触る許可は出さないけど取り敢えず君も礼儀として自己紹介しなさい」
「斎藤……智輝です」


智輝は今にも泣きそうな顔をしてたけど、自己紹介のあと「よろしく」と智輝の頭に手を置いた前原さんの優しい笑顔を見ると、途端にほっとしたように頬を緩めた。



「で、あれが智輝くんのお父さんかな?」
「うん!そうだよ!」


復活の早い智輝は前原さんの膝にちょこんと腰掛けて、ニコニコ返事をする。


「親子そっくりですね」
「いやあ……はは……」


兄ちゃんは前原さんのナチュラルな嫌味にたじろぎながら、ソファの上でまだ正座を崩せずにいた。

なんだか前原さんが頼もしく見える。


「お姉ちゃんの家お隣なんでしょ?俺そっちで一緒に遊びたい!」


前原さんは一瞬考え込んでから、
「兄弟二人で話したいこともあるかもしれないしね、遊ぼっか!お父さんに相談してごらん」
と、なんだかんだ俺と兄ちゃんに気を使ってくれてるのかもしれない。

俺としては別に良いんだけど。


「お父さん、良い?」
「良い子にするんだぞ。じゃあすみませんお願いします」
「はい、じゃあ智輝くん行こうっ」


二人は手を繋いで玄関に向かおうとしたが、智輝が「待って!」とストップをかけた。


「このジュース持ってく。お姉ちゃんも一緒に飲もう。修一が買ってくれた」
「一緒に?良いの?」
「うん!」
「ありがとー」


前原さんは、俺に申し訳なさそうに、でも嬉しそうに頭を下げた。

前原さんが嬉しそうにしてくれるなら、いくら値が張っても、買って良かった。