智輝と靴を脱いで上がった。


「謝ることないですよ前原さん。兄ちゃん何しようとしてたの前原さんに」
「いやあ……キス?」
「なんで」
「修一の彼女ってこの子だろうなって思って」
「思って、キスしようとした?どんな理論だ」


なんというか、昔からとにかくチャラくて質の悪い兄だ。未遂で済んで良かった。


「びっくりしました家来たら斎藤さんがいつもより老けてて服も性格も派手になってて……」
「老け……?俺こいつと一つしか変わらないよ……?」
「わあああすみません!私はまた余計なことを!ごめんなさい違うんです老けてなんかいません忘れてください!」


慌てる前原さんに、あからさまに落ち込む兄ちゃんを見て、鼻で笑った。ざまあみろ、と。



「お姉ちゃん」

兄ちゃんの頬と腹の痛みが引いたであろう頃、それまで黙っていた智輝が前原さんの手をそっと掴んで、なんだかまるで子供みたいな可愛い声で呼び掛けた。
いや子供なんだけど。


「ん?」


小さい子供を目にして反射的に優しい目で答える前原さん。
多分弟が居るから年下は好きというか、慣れてるんだろう。


「おっぱい大きいね!」


……子供というのは、本当に恐ろしい。

むにゅ、と前原さんの胸に遠慮なく手を置いて、元気な声でそう言った。