「兄ちゃん」
呼び掛けると前原さんがこっちを見て「あ!やっぱりあなた偽物なんじゃないですか!」と今度は兄ちゃんの腹に蹴りを入れて、すごいスピードで俺の元まで飛んできた。
「斎藤さん変質者!変質者が出た!キッドみたいに斎藤さんそっくりの変装マスクまで被って!」
「前原さんあの顔は彼の自前ですよ」
「ええ!?だって……」
「驚かせてすみません、僕の兄です」
昔から、顔はよく似てると言われた。
双子みたいに似ていると。
間違えられることもしょっちゅうだった。
「兄……?」
途端に前原さんの顔が青ざめていき、弾けるようにまた兄ちゃんの元へ飛んでいった。
「すみませんお兄さん私てっきり変態かと思って咄嗟に……!あああすみませんほっぺ大丈夫ですかお腹大丈夫ですか!」
「大、丈夫……」
苦しそうにお腹を押さえる兄ちゃん。自業自得だ。

