結局チョコは買わずにオレンジジュースだけ買ってスーパーを出た。
別にチョコは安いやつは安いから買っても良かったけど、あまりに甘やかすのが気に食わなかった。
でもスーパーを出たらそれはそれで満足らしく、俺の手を離してスキップしながらマンションに向かっていた。
「早く帰って氷入れてキンキンにして飲もー」
「そんな暑くないだろ今秋だぞ。それに氷入れたら果汁百パーセントが薄まるぞ」
「はっ、そうか!やっぱ今の嘘!」
「ハハ」
瓶のジュースっていうのは重いけど、そんなくだらない会話をしてたら家までの道のりはあっという間だった。
鍵を開けて家に入って、思わず瓶のジュースを落としてしまうかと思った。
「今日の斎藤さんなんか変ですどうしたんですか!」
「なんで~。別に付き合ってるんだから良いじゃん」
「酒臭いしなんか変だし嫌です!」
パチン!と大きな音が部屋に響いた。
俺と智輝は玄関に突っ立ったまま、兄ちゃんが前原さんに攻め寄り、嫌悪感丸出しの前原さんに派手なビンタをかまされるという、なかなか衝撃的なシーンを見ていた。

