③
「斎藤さーん」
「いらっしゃい」
「今日はDVD借りてきました。一緒に見ましょう」
前原さんは上がり込んでテレビに直行した。
「何見るんですか?」
「恐怖!凍りつくような心霊映像シリーズ3~あなたはこの恐怖に耐えられるか~」
「げっ」
俺は一人暮らしをしてからここ数年、一度もこういう心霊系は見ていない。
「あ、苦手でした?大丈夫ですよ私が居ますから」
前原さんは帰ったら家族がいる。
でも俺は前原さんが帰ったら一人で、寝るときも一人だ。
見てる間は一緒かもしれないけど、一人になったときの恐怖があるということを、一人暮らししたことのない前原さんには分からない。
猛反発したいのは山々だけど、そんな格好悪いことは言えないので「別に苦手じゃないです」と言っておいた。
結論から言うと、前原さんは終始叫びまくった。
隣にいる俺は、テレビより前原さんの叫び声にビビりまくった。
「ぎやっ」
「前原さんうるさい」
「うぐっ」
画面一面に生気のない白い女の顔が映り、声は出ないけど、鳥肌がたつ。
前原さんがまた大声を出しそうになったので口をふさいだ。必死にその手を引き剥がそうとする前原さん。
「もう叫ばない?」
コクコクと何度も頷いたのを確認してから手を離した。

