「……日野くん」
田嶋さんからの呼びかけに、俺は再度顔を上げた。
「本当はまだ好きだけど、日野くんも可哀想だから、私は日野くんを諦めてあげる」
「田嶋さん……」
「私は明日雪那と話つけるね。一発くらいは引っ叩いちゃうかもしれないけど、許してね?」
「……田嶋さん、良い女だね」
まあね、と笑ってから田嶋さんはまた言葉を重ねる。
「そう思うなら私くらいの良い男、今度紹介して」
「……ん、了解」
「ちなみに日野くんはあまり良い男ではなかったよ」
「……すいません」
田嶋さんは本当に楽しそうに笑った。
なんて強いんだ、と思う。
俺ももう、逃げるのはやめよう。
ちゃんと日野ちゃんと、向き合おう。
「じゃあ日野くん、またね。送ってくれてありがとう。もうここまでで大丈夫だから」
「うん。また明日」
「……お互い明日が雪那との勝負になるね」
「そうだね」
田嶋さんならきっと大丈夫だろう。
日野ちゃんとの友情を一回ぐちゃぐちゃに壊してから、以前以上の関係を一気に再構築してしまうんだろう。そういうタイプだ。
日野ちゃんの親友が、田嶋さんで良かった。

