日野雄大はあのときは、ひかりことを好きではなかった。それは、確かだ。

だけどきっと今は、ひかりのことを好きになれたはず。

だからきっと、うん、と答えるはず。
だから何の心配もいらない。

……そう、頭では思ってるのに。


私は靴箱の後ろから日野雄大を見つめながら、日野雄大が〝好きだよ〟と答えることを拒んでいた。恐れていた。


「そんなの、分かってるでしょ?」


最低だ。私は。


「俺は、好きでもない子と付き合わないよ」


こうなることを望んだのは、私。
命令したのは、私。


──なのにどうして私は、泣いてるの?

どうしてこんなに苦しいの?

もう、意味が分からない。


日野雄大のその言葉にひかりは嬉しそうに頷いていて、それを見つめている私の視界は、ぐにゃりと歪んでいる。

どうか声が漏れないようにと、必死で抑えた。