九月下旬、二人が付き合い始めて一ヶ月が経とうとしている頃。
放課後、私はいつも通り一人で帰ろうと廊下を歩く。
前だったらたまには、日野雄大と帰ることもあったかもしれないけど、今はそんなことできない。
……ちょっとは寂しい、かも。
だけどそれは、日野雄大と帰ることができないから、ではなく、私が一人なのが寂しいというだけ。
……どうしてそんな分かりきったこと、私は自分に言い聞かせてるんだろう。
乾いた笑いを溢した。
歩いて靴箱のところまでやって来たとき、そこに二人の姿を見た。
ひかりと、日野雄大。
思わず、二人から見つからないようにと、靴箱の後ろに隠れた。
隠れてから、気付く。
どうして隠れる必要があるんだろう。
なんで私はコソコソしてるんだろう。
なんだか、情けなくなった。
「日野くん、一緒に帰れるの初めてだね!」
「そうだね」
「なんか嬉しいなあ」
そっと靴箱の後ろから顔を出して、二人を盗み見る。
そうか、ひかり今日は部活休みなんだ。