そうだ。日野雄大の言う通りだ。
間違ってるのは、私。
……それでも。
私は、ひかりの涙を見たくなくて。
だから自分勝手に命令する。
「いいからっ」
日野雄大のネクタイを掴んで、グイッと引き寄せた。少しだけ日野雄大の体が動く。
日野雄大は私を見上げたまま、目を離そうとしない。
「……命令。あんたはひかりと付き合うの。分かった?」
──私を見上げる日野雄大の目が、切なげに揺れた気がした。
何なの。その目。
……私、あんたをそんなに切なくさせるようなこと、言った?
一瞬だけ見えたその表情に何故か胸が苦しくなって。鼓動が、激しくなった。
「……分かったよ。じゃあな」
ネクタイを掴む私の手を振り払うと日野雄大は早口でそう言った。
ベンチから自分の鞄を取りながら立ち上がって、足早にそこから去っていく。
その背中をぼんやり眺めていた。

