「振られるのは分かってるけどね、あんな素敵な人初めて出会ったもん。言わないと、絶対後悔する」
「そう……」
「あれ。リアクション薄いね」
「ごめんなんかびっくりしすぎて」
そんな会話をしていると、日野雄大が教室に戻ってきた。
ひかりと二人、暫く日野雄大を見つめていると、ひかりはにこっと笑って「それだけ。じゃあね」と、自分の席に戻った。
ひかりは、良い子だ。
ひかりと仲良くなるのに、時間は掛からなかった。ひかりほど仲良くなった子は、居ないかもしれない。
……そのくらい、私はひかりが好きだ。
前の席に座る日野雄大の背中をツンツンとつついた。不思議そうに振り向く日野雄大。
「放課後話あるからベンチ集合」
日野雄大以外のクラスメートの誰にも聞こえない程の声で、簡潔に伝えた。
日野雄大は、了解、とだけ答えてまた前に向き直った。
……私は、ひかりに幸せになってほしい。
幸せになってほしいなら、日野雄大の本性を知っている私は止めるべき?
だけど今の日野雄大なら大丈夫だと思う。
今の日野雄大はひかりの言うような〝素敵な人〟だと、正直思う。
……私は、ひかりの願いが叶えばいいと思う。

