それから一呼吸置いて、また日野雄大の目を見つめた。
「昨日、あれから家に帰ってね……お母さんに言ったの」
日野雄大は私のその視線に答えるように、見つめ返してくれる。
それは優しくて、私は言葉がすっと出てきて、すごく話しやすい。
「今までごめんね。今年からは私も、お父さんだけじゃなくてお兄ちゃんの墓参りもちゃんと行くからね。って」
私は認めた。お兄ちゃんの死を。
それは私にとって大きな一歩で、きっとお母さんにとっても同様で。
お母さんは涙を流して私を抱き締めた。
やっと分かったのね。……その言葉に、私はまた泣いた。
お父さんとお兄ちゃんが死んで辛かったのは、お母さんだって同じはずなのに。
その辛さを唯一分け合えたはずの私は、十年間お母さんを苦しめていたのだ。
だからこそこれからは、少しずつでも向き合っていかないと。前に進まないと。
「本当にありがとうね、日野雄大」
そう思わせてくれた日野雄大に、これ以上無い程感謝した。

