走り去る車を見つめていた視界が、滲んでいく。
「お兄ちゃん……」
呟いた一人言は、儚げに消える。
もう居ないんだね。
結局、空想は空想でしかないんだね……。
「日野ちゃん……」
滲む視界に、息を切らした日野雄大が入ってくる。
「死んじゃ駄目だ……どんなに悲しくても」
座り込んでいる私に合わせるように、日野雄大も地面に膝をつく。
すぐ隣で車が行き交い、その奥にはさっきは日野雄大の手にあったはずのストロベリーのアイスが転がって溶けている。
「俺がそばに居てあげるから……死ぬな」
「あんたなんかにそばにいてもらったって」
「日野ちゃんが居なくなったら、俺が生きていけない」
いつから私は、日野雄大にとってそんなに大層な存在になったんだろう。
なんでこいつが泣きそうになってんだろう。
日野雄大が、よく分からない。