だからそれを否定する日野雄大にちゃんとお兄ちゃんの姿を見せてあげようとした。

車道に飛び出すことに何の抵抗もなかった。

だってお兄ちゃんは、ちゃんと助けてくれるはずだから。


走ってくる車。お兄ちゃん、助けて。



ドン!と力強く押された肩。
私は車道から弾き飛ばされて尻餅をついた。


「いきなり飛び出すんじゃねぇ!」


捨て台詞を吐き出して走り去っていく車。



頬に温かいものが流れるのを感じた。


……そうだ。分かっていた。本当は。


お兄ちゃんはもう居ないんだって。

この世に居ないお兄ちゃんは、私のことを助けるなんて、できないんだって。



──私の肩を押して助けてくれたのは、生きている、日野雄大だった。