「青信号だったんだけどね、居眠り運転の車に轢かれたのよ、主人は。……轢かれそうになった颯太を庇ってね」
むごい、と思った。
日野ちゃんのお父さんは、颯太さんを、養子で本当の息子ではなくても、命を懸けて救おうとしたのに。
そのときは救えたのに。
結局自ら死んでしまったなんて。
「……颯太はかすり傷はあったものの無事だった。だけど、血だらけだったわ。主人の血で。主人は颯太を、無事で良かったと、抱き締めてから死んでいったから」
そこで、ずっと表情を崩さなかった日野ちゃんのお母さんの目に涙が浮かんでいることに気付いた。

