と。扉を開けて日野ちゃんの部屋から出ると一発目に視界に入った、正面の部屋の扉。

……部屋に入るときも少し気になったけど、多分これが日野ちゃんのお兄ちゃんの部屋なんだと思う。


一歩踏み出すと廊下がギシッと音を立てた。

駄目だ。いくらなんでもそれは。
と、頭では分かっていたけど。

きっと、気にならない方がおかしいだろ。あんな言い方されちゃ。


そっとドアノブを回して隙間からその部屋を覗く。


「……」


普通だ。誰も居ないけど。普通。

特別綺麗なわけでもなく特別汚いわけでもなく。

ベッドに勉強机に、日野ちゃんの部屋のように真ん中に小さめのテーブルも置かれている。


だけどあるものを目にして、俺の心臓がドクンと跳ねた。



──勉強机の上に、黒いランドセル。