「美味そう!いただきます」
「はい召し上がれ」


今目を輝かせたのは、猫被り日野くんだろうか。それとも性悪日野雄大だろうか。

……多分素だな今のは。


「雪那は昔から本当に数学駄目でねー。でも学年トップの彼氏が居るんなら安心ね」
「彼氏じゃないから」


日野雄大の否定より先に否定を入れた。

つもりだったが、日野雄大は否定するつもりはなかったらしい。


「あらそうなの?彼氏じゃないんだ……」
「雪那ったら照れることないのに」
「なんだやっぱり付き合ってるのねー!?」
「はい。彼女でもない子に勉強教えたりしませんよ」
「そうよねえ!もうこの子ったら照れ屋さんでねえ」
「……そういうとこが可愛いんです雪那は」


純情ぶって照れる〝フリ〟をする悪魔をギロリと睨むと、微笑み返された。

こいつの口から雪那なんて言われたら鳥肌が立つ。


「ラブラブなのねー」
「まあ、はい」
「じゃあ私は二人のお邪魔しないようにそろそろ戻ろうかしら」
「すみません気使っていただいて」
「いいのよー。じゃあ雪那よろしくね」


出ていったお母さんの背中を見送ってから。
日野雄大の胸ぐらを掴んだ。