「そうなんだ!じゃあ俺が数学教えてあげるよ!」
お母さんが後ろで見ているからか、口調は教室での猫被りな〝日野くん〟だ。
爽やかな笑顔に嫌悪感を覚える。
「いらない。じゃあね」
掴まれた腕をナチュラルに振りほどいて階段に向き直したのに。
「えー、いいじゃない雪那。教えてもらいなさい?」
……笑顔なのに何故かこわいお母さんの表情に言葉を失った。
こんなイケメンをただで帰すなんて勿体ない。そう、目で訴えかけてきている。
「任せてくださいお母さん!僕こう見えても学年トップですから!」
「あらあ、そうなの?よろしくね。あとでケーキ持っていくからね」
「ありがとうございます、僕大好物なんですケーキ!」
とりあえずナチュラルに一人称僕にするの止めようか。
……可愛いじゃねぇかこら。

