翌日、自分の部屋で黙々と夏休みの課題をこなしていると。


「雪那ーっ!」


一階からお母さんの大きな声。


何だ何だ。と、返事をしてからシャーペンを置いた。


「どうしたのー?」


階段の下のお母さんと目が合ってから、その奥に居る日野雄大とも目が合った。

……ああ。すっかり忘れてたよ。


「わざわざありがとうね。これ、傘」


後ろでお母さんの熱い視線を感じながら、傘立てから日野雄大のビニ傘を取って渡す。

私服姿でいつもより更に格好いい日野雄大がしっかりと受け取ったのを確認してから。

「じゃあね」


さっさと課題に戻ろうと階段の方へ向きかけた私の腕はすかさず掴まれた。

日野雄大をギロリと睨む。お母さん見てんだから離せよ、と目で訴える。……が、この馬鹿には伝わるわけもなく。


「今何やってたの?」
「数学の課題」


だからさっさと離せ。と、思っているのに。
日野雄大はパッと笑顔になる。