「じゃあ新学期に持ってくる」
「いや、俺が取りに行くよ」
「……は?」
取りに来る?日野雄大が、わざわざ?
ただ傘のためだけに?
眉間に皺を寄せている私をよそに日野雄大は勝手に予定を立て始める。
「さっそく明日行こっかな、俺空いてるし。日野ちゃん家の最寄り駅ってどこだっけ?駅まで迎えに来てくれる?」
おい。私の予定は無視か。
……と思ったけど、明日の予定なんか無かった。
「迎えになんか行かないよ」
「なんでだよ。俺日野ちゃん家知らねぇよ」
「うん教えてないもんね」
日野雄大は黙りこむ。
……無言で見つめるの、やめてほしい。
なんでこいつこんな無駄にイケメンなんだ。
「奴隷を御丁寧にお迎えに行く主人がどこに居るの?」
「……はい」
「家駅から五分もかからないから。地図書くから、ちょっと待ってて」
鞄の中からルーズリーフを一枚取り出した。
そんな私を、何故か嬉しそうに見つめている日野雄大。何なのこいつ。きも。

