「いいじゃん。教えろよ」
「奴隷のくせに生意気な。別にいいけどね」
「誰?」
「……お兄ちゃん」
いつかの日のように、ぽかんと口が開く。
予想外の返答だった。
いやいや、誰もこんなの予想できないって。
「お兄ちゃん?え?どういう意味?日野ちゃんのお兄ちゃん?」
「そう。そのままの意味。私の好きな人は、お兄ちゃん」
と、言われても。
そんなこと、すっと理解できない。
「……家族愛じゃなくて?」
「勿論家族としても好きだよ。だけどお兄ちゃんは、私の初恋の人なの」
「あ、そう……」
恋愛なんて個人の自由だし。
俺が口出すなんてできない。
だけど、日野ちゃんの恋に幸せな結末は、どう考えても来ない気がした。
それでも幸せそうに話す日野ちゃんを目の前にして、そんなこと言えるやつ居ないと思う。

