「〝好きです。放課後屋上に来てください。直接伝えたいです〟。おモテになられてよろしゅうございますねー」
「別に」
正直こういうやり方は俺の立場としては二度手間なわけだから、非常にめんどくさい。
俺だって日野ちゃんと同じく帰宅部なんだから、放課後はさっさと帰りたい人間なんだ。
「手紙で告白してまた直接告白するんだ。相当好きなんだね、日野雄大のこと」
そう言う日野ちゃんは優しい目をして微笑んでいる。
なんだかムカつく。
これだけ一緒に俺と過ごしてるのに、こういう手紙を見てヤキモチとかいう感情は湧かないのか。
……湧かないか。
湧くくらいなら、とっくに奴隷なんか止めさせてくれるわな。
「この手紙は捨てないんだね」
「捨てねぇよ。返事するときに返す」
「前丸めて捨てたのは返しそびれたから?」
「そうそう。あとは返事がなくても悪いイメージがつきそうにないのは捨てるな」
日野ちゃんは、ふーん、と言いながら俺の胸ポケットにその紙を返す。
「前みたいのは毎回読まずに捨てるの?」
「いや読むときもあるよ。たまに」
「へえ。で、捨てるんだ?」
「そう。読んで、笑うだけ笑ってからな」
「クズだね本当に」

