それからの日々はというと。
教室の中の日野ちゃんの俺の呼び方は、日野くん。態度も超普通。
二人きりのときの俺の呼び名は、日野雄大。態度はというと、糞でかい。
「日野雄大」
「あ?」
「肩。揉んで」
返事をせず日野ちゃんの肩を揉む。惨めだ。
てか全然凝ってないし。
「いかがっすか」
「うん、下手だね。もういいよ」
おいこら。俺の技術の問題じゃねぇだろそれ。肩こってから命令しろや。
そんな文句は心の中で呟くだけで精一杯。
……俺はなんで毎昼休みこいつと過ごしてんだ。
いつの間にか昼休みは例のベンチで日野ちゃんと二人きりが定番になっている。
それは勿論誰も知らないことで。
俺と日野ちゃん、二人の秘密。
「何これ」
日野ちゃんは肩揉みをやめた俺のカッターシャツの胸ポケットに入っていた小さな紙を取り出した。
今朝それだけを無言で渡してパッと走って行った女の子が居た。

