そのまま地面に煙草を落としてローファーで踏み潰す日野ちゃん。火が消えた。
「それは、ちょっと」
「ん?」
「やめようと思ってやめれるもんじゃない」
「煙草に使ってる分のお金で禁煙飴でも買えば?」
素っ気なく言う日野ちゃんは俺のポケットから煙草の箱を取り出した。
「これも捨てるんだよ?今吸ってたやつも片付けとくこと。じゃあね!」
それだけ言ってまた煙草の箱を返すと、俺の隣から立ち上がって颯爽と去って行く。その背中を見送って。
はあ、と一息吐き出してから、煙草の箱を見つめた。
没収すれば良いのに。返すんだ。
「それ!」
「わっ!」

