「日野くん、ここの数式よく分かんないんだけど……」
「おい日野!今日カラオケ行こうぜ!」


今日も日野くんのまわりには、たくさんの人が集まる。男女問わず大人気な日野くん。

私はそんな彼の後ろの席で小さく溜め息をついた。


「雪那も最初の頃は日野くん格好いいって言ってたのに、最近言わなくなったね」


溜め息をついた私の顔を不思議そうに覗き込むのは、田嶋ひかり。

入学してから初めて友達になったクラスメート。


彼女も例に漏れず、日野くんに恋する女の子の一人。


「別に格好いいよ、今も」



……ただその胡散臭さが気に食わないだけで。とは、言えなかった。