「……あのさあ」
煙草を口から離して、日野ちゃんを見つめる。
日野ちゃんは全然目を反らさない。
「昨日考えてたんだけど、日野ちゃんが俺の本性を皆に言いふらしたところで、皆が信じると思うか?」
「まあね。私もそれは当然思ってたよ。クラス一の人望だもんね、日野雄大は」
「だろ?」
「……自惚れんなよ馬鹿」
〝自惚れんなよ馬鹿〟そう言った日野ちゃんは、スマホを俺に向けている。
「何やってんの?」
尋ねると、日野ちゃんはスマホ越しに俺と目を合わせて、にんまりと笑った。
嫌な予感がしたけれど、口にしたままの煙草を咄嗟に離すことができなくて、俺ってこんな馬鹿だったっけ、と、自分で自分に呆れた。
「私だって証拠もなしに言いふらしたって皆信じないってことくらい分かってるもんねー」
「……まさか」
「だからわざわざこうして、証拠を撮りに来たの。ちなみにムービーです」
「……」
「思ったより簡単に成功しちゃった。日野雄大って勉強できるけど実は馬鹿なんだね?」
馬鹿。初めて言われた言葉。
カチンときたけれど、今回ばかりは言われても仕方ないと思った。

