「いつかまた彼氏兼奴隷に昇格するまで、俺はただの奴隷ってことで」
そうだね、と笑いながら答えて、今度は私が日野雄大の涙を拭ってあげる。
濡れた指先は、悲しいものではなかった。
「……待ってる、ずっと」
低くて掠れた、甘い声で囁いたその言葉には、愛してるという言葉以上の愛を感じる。
こんな我儘を言える相手も、そんな我儘を聞いてくれる変人も、私は日野雄大以外居ないと思う。
クラス一の人気者〝日野くん〟の本性を知った日、私は知らなければ良かったと思った。
だけど、今となっては本当に知れて良かった。
あの日からきっと、私たちはスタートしたんだ。
「日野雄大。怪我が治って退院したら……お花見にでも行こうか」
そういえばあそこに立っている木も、桜の木だった。
「いいね。どこで?」
日野雄大に微笑む。
「裏庭の奥の、あのベンチで」
──私たちの始まりの場所で、また。

