「……日野ちゃん」


良かった俺の本性知ってる人だ、という安堵と。
最悪だ昨日俺を奴隷にするとか言ってきた変人だ、という絶望。

両方がやって来た。


「やっぱ日野雄大ここに居たのかー。あれ以来ここ気に入ってたりするの?」


ちゃっかり俺の隣に座る日野ちゃん。

煙草の煙が空に浮かんでいくのを見上げている。


「てかなんで呼び捨てなんだよ」


ついさっきまで教室では日野くんと呼んでいたのに。

そんな呼び方をされるのは日野ちゃんだけに限らず初めてのことで、結構不愉快だ。


「だってあんたは、くん付けてあげる程の男じゃないもん」
「は?」
「私の奴隷だしね」


煙を見上げていた顔を今度は俺の方へ向けた日野ちゃん。