私もその後でリビングに向かった。
鼻歌を歌いながら冷蔵庫に野菜やら飲み物やらを閉まっているお母さんの後ろ姿を見つめる。
あの日のお母さんの言葉を思い出す。
いくら私の好きな人でも一生日野雄大のことを認められない。と。確かにそう言っていた。
私たちはあれ以来、日野雄大のことを話題に出したことはなかった。
「……お母さん」
日野雄大は、立ち止まってなんかいない。
立ち止まっていたのは、私の方だけ。
「ずっと、隠してたことがある」
お母さんもお母さんで、触れて来なかった。
日野雄大が屋上から飛び降りたということは知っていたはずだし、それは私に関係のあることだと普通に分かるだろうし。
だけどそれでも触れて来なかったんだ。
……そして私もそれに、甘えていた。
「最近、毎日日野雄大のお見舞いに行ってる」
悲しませることは、分かっていた。

