日野ちゃんはきっと。
俺を憎いように、俺の母親のことだって憎いだろう。許せないだろう。

……だけど。
ごめん日野ちゃん。

この女はやっぱり、俺の〝お母さん〟なんだ。


ずっと放ったらかしにされてたのに、俺は馬鹿かもしれない。弱いかもしれない。単純かもしれない。


それでも今すごく、呼びたいんだ。
またこの女のことを、お母さん、と。


俺を見下ろす女の目に、涙が溜まっているのを見た。

俺は痛む体を必死に動かして、自分の額に手を伸ばす。すると、温かい女の手に触れる。


「……お母、さん」


数日ぶりのその呼び方はなんだか照れ臭さと緊張が籠っていて。

お母さんは嬉しそうに微笑んだ。