日野ちゃんに腕を引っ張られて、階段を降りて一階のリビングに。
テーブルに鞄を置いていた最中のお母さんと目が合う。
日野ちゃんはさっきまで俺の手を引っ張っていたのに、いざとなると俺の背中を押して「まず日野雄大から私のこと紹介してよ」と言っている。
「お母さん、おかえり」
「ただいま雄大。久しぶりね。……あれ?そっちの女の子は?」
お母さんと日野ちゃんの視線がぴたりと合う。
日野ちゃんの体がピクンと動いた。何を怯えてるんだ。
「あの、この子彼女なんだ」
お母さんの目が少しだけ丸くなった。
日野ちゃんは一歩前に歩み出る。
「こんに、今晩は!初めまして。ひひ、日野雪那です!あの、ひにょくんとお付き合いさせていただいてます!」
おい日野ちゃん。噛んだぞ今。ひにょくんって言ったぞ。
しかし日野ちゃんは一杯一杯らしい。噛んだことに全く気付いていない。
お母さんはそんな日野ちゃんを丸い目で暫く見つめたあとで、目を細めて微笑んだ。
「初めまして。日野雪那ちゃん、ね」
「はい!」
「……そう」
そのとき、一瞬だけお母さんの眉が悲しそうに下がった気がした。
……いや、気のせいかもしれない。
日野ちゃんはそんなことを全く感じていないらしく、にこにこしている。

