「だって試験始まったらパニックになるんだもん!しょうがないじゃん!」


そう言って反論する日野ちゃんは、いつものあの気の強さはあるのに涙目のせいで全く凄みがなくて。

思わず抱き締めたい衝動に駆られる。


「数学出来る人にはこの気持ち分からないかもしれないけど!切実なんだから……!」


潤んだ瞳で見つめられて、俺は最早限界。

ベッドから立ち上がって後ろから日野ちゃんを、ぎゅっと抱き締めた。


「……なんでこの流れで、抱き締めるの?」


日野ちゃんは手に持っていたシャーペンを離して、抱き締めている俺の腕にその手を添えた。


「だって可愛すぎ。日野ちゃん」
「いや意味分かんな」
「日野ちゃん」


日野ちゃんの言葉を遮り、抱き締めたまま屈んで、日野ちゃんの頬っぺたに。